小説の形式とジャンルについて


Author 黒金 蒼燐


 資料として、小説のジャンルや形式についてまとめる。  世の中にある全てのジャンル・形式を網羅したわけではなく、また説明の中には、一面 的な見方でしかないものもある。  あくまで、参考程度に。 【ジャンル】 *「推理小説」  なんらかの事件・犯罪の発生とその合理的な解決へ向けての経過を描く。以前は探偵小 説と呼ばれていたが、「偵」が当用漢字制限を受けたために徐々に使われなくなり、今に 至る。ミステリー。サスペンス。 *「冒険小説」  秘境へ向かって探検の旅にでたり、あえて余計な危険を冒す主人公を特徴とした小説。  あるいは漂流しているために仕方なく危険に飛び込んでいく主人公を主題とする小説。 *「時代小説」  主に明治時代以前を題材とした小説。主要な登場人物には歴史上実在しなかった架空の 人物を登場させる場合が多い。 *「歴史小説」  主に明治時代以前を題材とした小説。主要な登場人物が歴史上実在した人物で、物語の 主な部分はほぼ史実通りに進められる。 *「ファンタジー小説」  魔法やその他の超自然的・幻想的な事物を主題として描かれる小説。 *「伝奇小説」  フィクションの根拠に、史実とは異なる歴史や血筋あるいは奇異な伝承・民話などを用 いる小説。 *「伝記小説」  紀実小説。ノンフィクション小説に近い。正確な史実に関する記述が求められ、曖昧さ は極力避ける傾向が強い。 *「SF小説」  サイエンス・フィクション。科学的な空想にもとづいたフィクションの総称。  宇宙を舞台にしているものはスペースオペラ。  19世紀を舞台として発達した蒸気機関に主題をおいたものはスチームパンク。  架空の通信手段、または情報技術を主題にしたものはサイバーパンク。  サイエンス・ファンタジーをSFという場合もある。スペース・ファンタジーをSFと 呼ぶのはあまり一般的ではない。 *「現代小説」  現代を主題にした物語の総称。社会問題、恋愛、様々な事件・事故などを主題としてい る。  そのほかのジャンルすべてを内包している場合があり、非常に大きな範囲を指す言葉で ある。 *「暗黒小説(ノワール)」  犯罪者が主人公となり、人間の暗い部分を描くことが多い。また、大抵の場合、結末に は悲劇的なものが採用される。ハードボイルド。  神秘的・恐怖的要素を含んだものをゴシック・ノワールという場合もある。 *「ジュブナイル」  14歳〜17歳の若者を対象としたもの。ヤングアダルト。近年ではライトノベルとし て認知されている。 *「オートフィクション」  自分自身をモデルとしたフィクション性の強い小説。私小説。 *「大河小説」  一人の人物の人生や国家の群像などを歴史や文化などに絡めて描いたもの。  とにかくスケールが大きいのが特徴。 *「ロマンス」  もとは「ローマ的なもの」という意味。  中世ヨーロッパでは、正式な古典文化を「ラテン」、庶民的な大衆文化を「ロマンス」 と呼んだ。  現在では特に恋愛小説を指すが、もとは大衆向けの空想小説、中世騎士物語、民族叙事 詩なども含まれる。 *「ピカレスク小説」  悪漢小説と和訳されることもある。  大抵の場合、一人称、エピソードの羅列、下層出身の主人公、社会批判的な性格などの 特徴を持つ。  物語の筋立てとして、日常を生き残るための戦いが描かれる場合が多い。 【分類】 「長編」  およそ原稿用紙300枚(120000字)以上。  これといって長さに上限はない。単行本一冊が目安。 「中編」  およそ原稿用紙100枚〜300枚未満。  明確な基準はなく、短編より長く長編より短いといった程度。 「短編」  およそ原稿用紙10枚〜100枚程度。  長編よりも構成や語の使用に制限・特徴等がある。 「掌編」  ショートショートと混同される。数百文字。300文字、800文字などが有名。  原稿用紙10枚程度のものも含まれる。 【その他】 「クロスオーバー」  もとは並列したストーリーラインを新たなストーリーが横断してつなぐという意味。  例として、異なるシリーズの登場人物同士が共演すること、異なる主人公が同一世界・ 同一時代上で活躍することなどがあげられる。  なかでも、周到な設定の連鎖によるものをハイパーリンクと呼ぶ。 「スター・システム」  キャラクターの容貌や名前を確立・固定して、それを異なる作品の異なる役柄に次々に 割り振る。登場人物を役者に見立てた手法。  手塚治虫『火の鳥』などが有名。 「スピンオフ」  ある作品のサブキャラクターを、後に別の新しいシリーズの主人公に据える。 「シェアード・ワールド」  複数の作者が同一の世界や登場人物を共有して創作すること。シェア・ワールド。 「パスティーシュ」  作風の模倣。パスティッシュ、パステーシュとも。  広い意味でのパロディも含まれる。 「エピゴーネン」  文学や芸術の分野などで、優れている先人のスタイル等をそのまま流用・模倣して、オ リジナリティに欠けた作品を制作する者を指す。  模倣者。亜流。身代わり。  現代における「パクリ」と意味的に極めて近い。 「オマージュ」  尊敬(リスペクト)や敬意のこと。  文学や芸術の分野では、尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作す ることを言う。また、作品のモチーフを過去の作品に求めることも指す。  本歌取り。 「コミックリリーフ」(コメディリリーフ)  深刻な物語の中に、緊張を和らげるために現れる、滑稽な登場人物・場面・掛け合いの こと。


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